statement

2018
寒竹泉美(小説家)

2014

太原有紀子(翻訳者)

2013

加藤義夫(アートキュレーター)

太原有紀子(翻訳者)





詩画集“あわいと暮らす”出版記念エール文  寒竹泉美(小説家)
 
 

赤松さんの絵は、とてもやさしくて可愛らしい。不思議な感じもするし、神秘的でもある。形がないから、何に見えるのかを試されているような気持ちになる。 

 そんな彼女が詩も書くのだという。はたして、どんな言葉をつむぐのか。ちょっと緊張しながら開いた作品集には、あっけないほどシンプルでまっすぐな言葉がならんでいた。可愛らしくて何でもない言葉たちが、ちょこんと座ったり、とことこ歩いたりしている。それはまるで、隣に座っている仲良しの友達のひとりごとみたいに、耳からするんと入ってくる。

 そうか、この絵は、赤松さんの目から見た日常なんだ、と、わたしは初めて理解した。赤松さんは別に、謎めいた抽象画で誰かを惑わしたいとか、美しい色で芸術を極めたいとか、そんなことを考えているわけではなく、いつも見ているなんでもない日々の、このうえなく美しい一瞬をどうやってキャンバスに表そうかと試行錯誤した結果が、この絵なんだ。

 いつも言葉に紐づけされて飛び立てないわたしは、赤松さんの絵を通してあわいの世界をのぞきこむことができる。手を止めて空想することができる。そして、世界はもっと大きくやさしいのだということを思い出す。

 
 


個展 2014-幸せな孤独-     太原有紀子(翻訳者)
 

弱さを抱きしめる強さを
表現したかったという  
赤松亜美さんの描く  
「幸せな孤独」とは 
どんな世界なのでしょうか

まず、深呼吸をして
あふれる情報をできるだけ遮断して
向き合ってみます

何かを強く訴えかけるわけではなく
強く吸引されるわけでもない

ただ寄り添ってくれる優しさと
世界がスローモーションになった感覚と
重力から開放されていく感覚と

心を縛り付けていた
重い鎖を断ち切ってくれるような

そんな強さも
あとからじんわり伝わってきます

そうしているうちに
世界が立てる人工的な音さえも
どこか懐かしく感じられて

五感のすべてが
研ぎ澄まされていくような
不思議な感覚になり
安らかな孤独の世界に誘われていきます

この感覚は
ガラス細工のような月を見上げていたとき
雲間から一筋の陽の光が差し込んだとき
土砂降りの雨が
世界を洗い流してくれるように感じたとき
そういうときの感覚と似ていました

出来事や想い出と呼ぶには
あまりにもささやかな瞬間でも
生きているということが
それだけで
とてもいとおしいと思えるような瞬間

そのような瞬間の積み重ねが
「幸せな孤独」なのかもしれません

みなさまご自身の 「幸せな孤独」を
ぜひ、体感してみてください!

 
 
 

「言葉少なく、はかなさをイメージ」   
加藤義夫(キュレーター/美術評論)
 
 2年前の夏に赤松亜美さんの絵画をはじめてみた。その頃の赤松さんは大阪芸術大学芸術学部美術学科の4回生。私は単独で抽象ゼミの3回生と4回生の前期作品を講評した時のことだ。白い絵肌に淡い色彩の詩的で繊細な絵を描く学生との印象を持った。その画面は日本的とも感じられた。
 日本の穏やかな風土から生まれた文学的概念「もののあわれ」や「はかなさ」という美意識。「無常観」といった不確実性や消え入るさまは、昔から日本人誰もが抱く世界観のひとつであろう。地理的自然環境の違いがその地域、あるいはそこの暮らす人々の思考や世界観に影響し、また宗教や自然観もそこから派生するものといえる。「はかなさ」はそこから生まれたといっても過言ではない。このような世界観は、「ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。」で、はじまる鎌倉時代の随筆家、鴨長明の「方丈記」にも重なる。
 赤松さんの絵画にも日本人が持つ伝統的な自然観が遺憾なく発揮されている。
画面に描かれているものは、花であろうか。本やノートに挟む押し花、あるいは散りゆく花びら。空間から浮かび上がるその姿は、「はかなさ」の象徴ともいえる。花びらは化石となり、記憶を封印し画面に息をひそめ留まる。その沈黙の言葉とは「はかなさ」ともいえよう。
 作品のタイトルに使われている言葉にもその「はかなさ」があらわれている。
例えば、「遠くから聞こえる」「ふと寂しくなる」「ある夏の終わり」「君のヌケガラ」「雨がやむところ」「大空のはしっこ」など、彼女らしい感性で「はかなさ」のイメージが展開され、彼女の内なる世界が響き伝わる。
しかし、ただ「はかなさ」を表現しているわけでもない。絵画として成立のさせ方に空間性の工夫もみられる。描かないところに沈黙の言葉を語らせるといったように、画面の空白は大きな意味を持つ。言葉少なく、存在感を示すことも日本的美意識であろう。初個展に期待が膨らむ。
 
 


 初個展 2013     太原有紀子(翻訳者)
 
 心地よい風を感じて
ふと空を見上げると
花吹雪が舞っていたときのような
少しはかない幸福感を
「よかったらどうぞ」と
さりげなく差し出しているような
作品を描く
赤松亜美さんの個展です

春の陽射しのように
ふんわりとまとわりついてくる
作品世界に浸っていると
日々めまぐるしく起こっていることや
洪水のように流れる情報を
しばし遮断してくれる
シェルターの中にいるように思えてきます

心地よい孤独に包まれるまま
存在していることだけに
意識を集中してみます
完全な心の休息のために

ユニークで象徴的なタイトルは
心の扉を開ける鍵のようです
カチッと回して
心の扉を開いたとき
みなさまの心の目に映るのは
どのような場面あるいは光景なのでしょうか